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「寒いっ」


叫んだからってどうにかなるものでもないんだけど、


吐く息は白くて、


コートを着込んでいても、カラダを刺すような寒さ。


その場で足踏みしてもちっとも身体は温まらないし、





「早く来ないかなぁ」




あたしの前を仲良さそうに過ぎていくカップルを横目に呟く。


彼女の手には、ヴィトンの袋。


街中はイルミネーションが施されていて着実に街はクリスマスの雰囲気に包まれている。
















  二人のはじまり 。。。12。。。    祈り




















「待った?」


ポンと肩を叩いて、あたしに微笑んだのは






「高橋くん」





変わらない笑顔がそこにあった。




高校のときとはイメージが変わって、


少し茶色くした髪はぴょこぴょこと立てられていて、


紺色のジャケットは見た目より暖かそうで、







「『待った?』なんて・・・」



あたしは可笑しくて、笑ってしまう。




「だよな、俺が『待った?』て聞くの変か。せっかく野坂と恋人ごっこできるかなって思ったのに。


あのカレシ待ってるの?」



「そうだよ」






あれからまだあたしは藤田さんと続いてる。





あんなことしたあとだったから、一度は離れてしまうと思っていたココロ。



けど、今でもあたしのそばにいてくれている。











「そろそろ結婚?」


「まっさかぁ」



あたしはもともと結婚願望が強くって、


結婚できるなら明日にでも! なんて思うけど、


藤田さんは半年前に昇進したばかりだし、今はそんな余裕ないと思う。








第一、あたしとの今後だってどう考えてるかわからない。


今、一緒にいてくれるのだって、もしかしたら癒しの延長としか考えていないかもしれない。








「デート?」




まぁそうだけど





「ちょっと違うかな」


「へぇ」




高橋くんはあまり深く聞かない。




それが無関心だからとかじゃなくて、相手を思いやるが故ってことはよく知ってる。








去年の冬休み明け、1ヵ月ぶりに登校したあたしにもそうだった。


あたしの顔を見てクラスの皆は質問攻めにしたけど、







彼だけはいつもと変わらない様子だった。


本当に、あのときの変わらない「おはよう」の口調がすごくうれしかった。











「野坂、今、何してるんだっけ?」


あたしの隣で一緒に壁にもたれる。


「フリーター。週4回、居酒屋でバイト。高橋くんは」




確か




「俺? 大学生」



知ってるよ。


卒業式、先生たち大騒ぎしてたじゃない、うちの学校始まって以来の快挙って。











「・・・もう少し、野坂と話したいんだけど、さ」


視線の向こうにはあたしを探してる藤田さんの姿。




「あのカレシにまた『補導するぞ』て言われたら困るし」


けらけらと笑いながら


「じゃあまた」



ヒラヒラ手を降りながら、雑踏の中に消える。









「悪い。遅れた」


走って来たのか、肩を上下させながらあたしの目の前にいる愛しい人。



「ううん、大丈夫」


差し出された手に、指を絡ませるように繋がる。


かじかんでいたお互いの手が、少し温かくなる気がした。















人気のない道。何度通ったかわからない道。


藤田さんの右手はしっかりあたしの左手と繋がっていて





藤田さんの左手には小さな白い花が一輪。









行き先はいつも一緒の、石畳の教会。






ギィ。


木で造られた重い扉を開けるとそこは異世界が広がっていた。





何度来てもこの瞬間はハッとしてしまう。




ステンドグラスの厳かな雰囲気。


ミサがあったらしく、通路には規則正しく蝋燭が灯っていて、


祭壇には大きな蝋燭。




足音が反響するなかであたしと藤田さんはゆっくり祭壇に進む。











藤田さんは左手に持っていた花を祭壇の上に載せる。







「もう、1年経ったんだな」




言葉にしたらほんの一瞬だけど、忘れたこともない。






それはきっと、藤田さんも一緒で









ちょうど1年前の今日、あたしは一つの命の灯を消してしまった。


「・・・うん」











ねぇ、神様。




今、あなたのもとに




あのコはいますか?




8週間しかあたしのもとにいることが出来なかった、






他の何にも変えられない宝石の原石だったあのコ。



あなたを失うことは自分で決めたはずなのに、失ったあとは







ずっと心が晴れなくて、






しばらく笑えなかった。





そんなときも、側にずぅっといてくれたのは、今、隣にいる大好きな人。






心のケアをしてくれた大切な人。

















「・・・そろそろ行くか?」



言葉の代わりに強く手を握る。










また、来月来るよ。






聞こえるかどうか、伝わるかどうかわからないけど、あたしは、あなたを愛してる。


そして、あたしの隣にいてくれている人も、あなたのことを誰よりも守りたかったんだよ。














「ちょっと話があるんだけど」


そう言われたのは教会をでた直後。









なんだろ、




よくわからないけど、




黙って手を引く藤田さんの顔が、






少しだけ








紅い気がした。









いよいよクライマックス突入です。


あとはあいざわの力量と藤田しだいです。




恋愛文担当。あいざわ紅。





クライマックスですかぁ。楽しみです。
それにしても、高橋君はいい奴ですね。
indigoblue-rhythm アクション文(?)担当:藍羽 一。

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