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あたしが、あなたに惚れて、付き合ってはじめて迎えた朝。





「もう覚悟しないとな」








あたしの頬に触れながら、



白い煙を吐き出しながら、言っていたあの言葉。








一生、現実化なんてしないと思ってた。



宙ぶらりんのまんま、その言葉は消えてなくなってしまうと思ってた。









いつか、あたしが大人になって、あなたの隣に見合う女になったときまで、





声を潜めているはずの言葉は、



こんなにも、早く具体化されたんだ。























  二人のはじまり 。。。10。。。    ゴメンナサイ。


























「8週目ね」



「本当ですか?」











病院独特の消毒液の臭いと甘いピンクの壁紙。



おなかの大きな妊婦さんの幸せそうな顔と制服のままのあたしの姿。




どれをとってもミスマッチで










心が虚しくなる。










砂嵐みたいな写真の中のぽっかりあいた黒い穴。




それが、










紛れも無く、あたしのナカに新しい生命が宿ってる証。














「学生よね?」



オンナの先生はあたしのカッコを舐めるようにみる。




着崩したブレザーに中身の空っぽの薄っぺらいカバン。


少し色の抜けた髪に化粧をしたあたしは、







目の前の彼女にどううつっているんだろう。









「・・・ハイ」







「相手は?」






尋問のような冷たい声。





ドラマで見るこんなシーンとはまったく違って、


痛さが、身にしみる。




あたしはそんなに場違いな人間ですか?








さっきも、待合室で待ってる間はずっと逃げ出したかった。



やさしい色のナース服の看護師さんも、


不思議そうにあたしのことじっと見てた。





赤ちゃんのポスターの中に端っこに追いやられている性感染症やエイズのポスターとあたしを交互に見ている人だっていた。







確かにあたしはこの場に、そぐわないカッコでいたのかもしれないけど、











「・・・社・・・・会人です」









お願いだから、そんな目でみないで









「産まないならコレに名前、書いてもらって」










事務的にというか機械的に渡された1枚の紙切れ。





あたしは、







そんなに悪いことをしたんですか?































「暫く来ないんじゃなかったか?」




そのはずだった。



最近、ずっと入り浸りでママが心配するから、少し控えようって思ってた。









けど結局、此処にしか行き着く場所がなくて



「藤田さん、あたし・・・・」





ソファーに横になったまま、部屋の奥に消える藤田さんを目で追う。






できるだけ普通を装うとしても











「どうした?」







向き合って言葉に出来ないあたしの頭を優しく撫ぜるその手が、辛くなるだけ。






こんな体勢で話す内容じゃない。








あたしはゆっくり身体を起こす。









「あたし、・・・あのね・・・・


・・・赤ちゃんが・・・いるの・・・」













「そうか・・・」





しばらくして聞こえた藤田さんの落ち着き払っているようなその言葉には色々な感情が混ざっていて、




視界の端で、藤田さんが唇をかむのが見えた。








あたしはまたこの人を困らせてしまっているんだ。








あたしは涙しかでなくて












「・・・・・・・美弥の家、行こう」









藤田さんに身体を支えられて、ようやく歩くことができた。

















だから、



車のなかで藤田さんが呟いた






「俺は覚悟できてる」






って言葉も聞こえなかった。





























家には遅いと言っていたはずのママも帰っていて




あたしと藤田さんを迎えてくれた。










「すみません」




藤田さんがリビングに入るなり、土下座してて。








まるで他人事のようにしか




あたしは見ていることしか出来なかった。











あたしは、どうしたいんだろう。





あまりに色んなコトがありすぎて、















ワカラナイ・・・・ヨ。














「・・・藤田さん、顔上げて」






いつかこんな日がくると思っていた、そんなママの顔。




ごめんね、ママにもあたし迷惑かけてる。






ママの優しい言葉に促されあたしの隣に座った藤田さんは











すごく辛そうで








こんなつらい思いをさせてるのはあたしで。









それに、今のあたしには、この人の子供を産む自信がない。









ハイ、どんどん暗くなりつつあるこの話。

本当にゴメンナサイ。



恋愛文担当。あいざわ紅。

・・・もぅ、恋愛文と言ってのいいのかも不安。





暗いと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、
こういうことって真剣に考えなきゃいけない問題なんではないかと私は常日頃考えてます。
indigoblue-rhythm アクション文(?)担当:藍羽 一。

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