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「今日明日は安静に。シャワー浴は明日から、入浴は明後日からにしてください」








機械のアナウンスみたいに話す受付の人。






彼女にとってはいつも見る当たり前の光景の中の一つなんだと、思う。













「はい」









「・・・・・セックスは2週間後からにして下さい」

















その目は一瞬あたしの姿を捉えて、また、机のほうに移動する。



あまりにあっさりしていて、










「はい」
















言葉にたいしてあたしはただ返事するだけだった。







何も考えたくない、ただ黙って彼女の手の動きを眺める。









少しの狂いもなくペンで何かを走り書きして、

















渡される薬。




手術費の明細書。


















  二人のはじまり another story        Compensation 3**


































「あと、」







こちらを希望してたみたいだから、











そう言われるみたいに差し出されたのは、
















手術の直前に見たあの子の最後のエコー写真。






















「・・ありがと、ございます」









色あせちゃいけないコトだから、




あたしのナカで8週間、









20グラムまで育ってくれてたあの子の証が欲しかった。








こんなあたしだけど、一瞬でも母親にしてくれた大事な存在であるあの子の

















何か形残るものが欲しかった。









一生、その存在を忘れたくなかった。




忘れられるはずがなかった。



















誰にも認められることがなかったけど、






あたしと藤田さんの愛した証だったあの子だから。





















病院には朝来たはずなのに、




空はオレンジ色に傾き始めている。










少しずつ空はまた、夕闇に包まれていくんだ。




そして、また朝になっていく。





















ママに電話しなきゃ。









カバンから携帯を取り出そうとして

















けどディスプレイを開くことができなかった。
























「・・・・・・・藤田さん、」













冷たいアスファルトの病院の前にスーツのまま、しゃがみ込んでいる姿。

















朝と同じだ。





朝、病院の前に来て、まさかいるなんて思ってもいなかったのに、







真っ白なワイシャツにネクタイを締めた姿が、







「今は、そばに居たいんだ」のその一言が、



















あたしにはすごく辛かった。























あんなにも会いたかったのに、今日だけは会いたくなかった。










誰よりも大好きな人なのに、今日だけは誰よりも大嫌いで、誰よりも会いたくなかった。
















その恰好と、『産婦人科』って特殊な環境のせいで、




藤田さんは妊婦さんや看護婦さんに好奇の目で見られて、







でも前だけを見て、







手術が始まるまでずっと一緒にいてくれた。




人目もはばからずに繋いだ手がすごく温かくて、


暖かさを感じると、それ以上に謝罪の気持ちがどんどん膨らんでいって。

















できるのであれば、あたしに勇気があるなら戻りたかった。



















特別何かを話すわけじゃなくて、



最初で最後の、初めての家族で一緒にいた僅かな時間。













「帰ってって言ったのに・・・・・・・・・」




ただ俯いてる。





その、酷く頼りなく、儚く見える背中がすごく、胸を痛ませる。

















あたしは、






藤田さんが辛くなると思ったから、半ば強引に追い出した。














あたし以上に心の変化が機微で、


あの温かい場所にいたら、














藤田さんが壊れちゃうって思った。













だって、あたし以上にあの子に産まれてきてくれるコトを望んでた。



パパになるコトも、







すべての覚悟も出来てたから、












あたしが、「産めない」て言ったとき、






その何もかもを粉々にしちゃった。
















それなのに、



どうしてここにいるの、






自分から傷つこうとするの、









そう言いかけたけど、





言えなくなる。
















12月の寒い風にずっとあたって、








痛いくらい紅くなっている頬よりも、



真っ赤になった瞳で見つめられたから。









「藤田さん」



「・・・家まで送らせて欲しい」









声が掠れて、少し鼻声になっていた。





あたしの肩を抱く冷たくなっていた手













何もかもがいつもと違う。

















「いやだ・・ぁ」



「・・・・・・・・」


















お願いだから、もうこれ以上のコトは望まないから












さっきの「大嫌い」「会いたくなかった」って気持ち、取り消すから、











そんなこと思っていないから。
















「帰りたくない」


















助手席に乗せられる。




このままどっかに連れてってよ。










「・・・」





何か話して、






いつもみたいに抱きしめて












「キスしてよ」

















浅はかで、そうしたら元通りに戻るかもしれないと思った。






























信号が赤になる。





「美弥、・・困らせるな」










温かくなり始めた大きな手が、




膝の上で堅く握り締めた手をただ黙って見つめるあたしの頭を撫でる。





















その手はそこに欲しいんじゃ、ない。













けど願いは聞き入れてはもらえない。






そんなことは当たり前として受け入れなきゃいけないのに。













けど、ムリだよ。













声は、いつもと違う、



感情がからっぽになっちゃったみたいな声。








「・・、ごめんなさい」




それしか言えない。
















「大切なのにいいかげんだった・・」




藤田さんの口から呟かれた言葉。











「避妊もしないで、したら妊娠する可能性あるのは充分知っていたくせに、…悪いのは全部俺だ」




まるで、あたしに全くの非はないとでも言うような言葉で、




「違うっ」








悪いのは藤田さんじゃない。




あたしにだって充分すぎるくらいの責任がある。









車のウィンカーが点滅して角を曲がる。






















車があたしの家の前で止まる。



玄関前には仄かな明かり。







きっと、玄関の前でママが待ってる。









「ご、めん」




そう呟いた藤田さんの声は今にも泣き出しそうな声で、












そんな泣きそうな顔されても





嫌だ、



「抱きしめてよ」













あたしが不安なときは、




いつも、ギュッとしてくれるじゃない?











ずっと一人でいたのが恐かったし、寂しかった。





「俺には今その資格はないから」










資格なんていらない。



あたしが今欲しいのは何よりも、


その温かい体温。








「今、美弥を抱きしめられるなら、


どんなことをしても、守る、べきだった・・・・・・」











初めてだった。








藤田さんの目から大粒の涙がはらはら零れるのを見たのは。




声も出さないで、








隣にいて、いつもはあたしを慰めてくれるはずの人が、顔に涙を伝わせる。












知らなかったわけじゃないのに、



些細なコトで人の心が崩れてしまうコトくらい。











「・・・・藤田さん、」


ごめんなさい、















「お願いだから」








お願いだから、








            泣かないで













ごめんね。



って、言わなきゃいけないのはあたしだ。
























無意識に






腕をのばして藤田さんの身体を抱いていた。




抱きしめた藤田さんの身体から伝わる温かい人の体温を、











感じれば感じるほど、








今頃になって、どんどん、あの子に対する愛おしさが溢れてきた。
















藤田さんは数え切れないくらい、




「ごめんなさい」




て、




声を上げて涙を流した。








その言葉と涙は、











あたしと赤ちゃんへの懺悔の言葉・・・だったんだと思う。























何かの雑誌で、



男の人は赤ちゃんを失う痛みが分からないなんて書いてあったけど、嘘だ。











あたしの中で、こんなにもあの子の消えた命を悲しんでいる人がいる。















あたしが女子高生で良かったと思った。


こんな景気良く肩の開いた服じゃなきゃ、









藤田さんがどれだけ泣いていたかもわからなかった。















お腹よりも、心がしくしく痛んだ。









この前,学校の講義で中絶についての授業を行ったばかりで、確かに統計上で,男性のほうが女性よりも中絶ということに関しての意識が低いという統計を見ました。

でも,何かで許されるものではないというのも事実だし,「命」を考える上で、この「行為」自体がどういうものか今一度振り返れればと思います。




あいざわ紅。
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