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「産めない・・・・」





そう、あたしが『望んだ』通り、


赤ちゃんはいなくなって拒んでいただるさも消えて、








そんな時でも、藤田さんは一緒にいてくれた。








その現状も『望んだ』はずなのに、


しくしくと胸が泣いていて、裂けそうになる。


だって、




空っぽなんだもん。



抜け殻みたいに心がどこかに置いてけぼりになっているようにも感じた。












  二人のはじまり another story        Compensation 6**

























会うときは、前にも増して優しくて、



けども、態度に遠慮がちな仕種が見える。


前はさほどお互いが意識してなかった愛情表現の仕方とか、


服につく煙草の香りとか。



あたしは気にしてなんかいないのに、あたしの前で煙草を咥えなくなった。


パパに気を使っているのがいやになるくらいわかる。




あたしの一件でパパは藤田さんを煙たがって、本当は会うことを反対してるの知っているから、






「本当は、会っちゃいけないんだろ?」








藤田さんもパパの想いをすごくよくわかっていて、


何度か、あたしが会いたがるのを拒んだ。


けど、逆にあたしがそれを強行していたのかもしれない。







「赤ちゃんがいなくなって寂しいのはあたしだよ?」







そう言えば藤田さんは黙ってあたしを部屋に入れてくれた。



どうすれば藤田さんがあたしを受け入れてくれるのか、



なんとなく覚えて、ずるばかりだった。



確かに会えなかったら、あたしは不安になる。



心が簡単に不安定になって情緒が乱れる。


小さな独占欲が藤田さんのコトを手放したがらない。




だから、


やっぱり赤ちゃんを産んだ方が良かったの?


そのほうが、あたしは藤田さんと幸せになれたの?




何度も言葉にしかけて、



いつも言葉を飲み込んだ。




喉につかえてしまう分だけ、


罪の意識は膨らんで行く。




こんな歪んだ権利を得るためにあの子を利用していたら、


あの子は泣いていると思う。






あの子はどんな子だったんだろう。



どんな子に育っていったんだろう。


藤田さんに似て、頭が良くて、綺麗な子になったんだろうか。


それとも、あたしに似てとりわけ個性のない平凡な子になったのかな。


そう考え思い描くコトさえ、あたしは砕いてしまったんだ。


藤田さんの憧れていた『家族』と言う形さえも




ホントは、


「産みたかった、」




妊娠と言う事実を知ったときのあの温かい空気は今でもはっきり覚えている。


8週間、確かにあの子は存在していたんだ。



もうあの子のいないお腹を撫でても温かくもなんともない。



信じてくれなくてもイイ。



けどね、愛してたんだよ?



それは一瞬と捉らえられても当然だけど、





けどその一瞬でもあなたのパパはあなたを愛してくれて、永遠に形づけてくれた。





それを砕いたのは他でもなく、あなたのママになるはずのあたしだった。




責めるならパパじゃなくてあたしにして。







久々の登校日


教室に入るなり友達が数人駆け寄ってきた。



「美弥、どしたの?」



さすがに(冬休みを挟んだと言えど、)1ヶ月も休むのはおかしいんだろうな。



「体調崩して、寝てたんだよね。軽い引きこもり」



そう軽く笑って見せる。



本当は赤ちゃんを失って、藤田さんの心までも一緒に失った気がして、気がおかしくなってた。


学校にも来れないくらいだった。



「あ、そうなんだ」



安心したように友達の一人が胸を撫で下ろした。





・・・誰にもいう必要はない。






同情なんてしてもらうつもりなんてないし、



もしも誰かがそのことは違う人に話したら藤田さんの立場が危なくなるかもしれない。


女子高生を妊娠させたなんて・・・。



昼休み、何をすることもなくただ外を見つめていた。


これからのスケジュール帳は白紙。


周りの友達は受験のコもいるし、4月からの生活に備えていろいろ準備に忙しいらしくて、


あたしはその場に残されているみたいだ。





胸ポケットに入れていた携帯が震える。


ディスプレイに表示されたのは、藤田さんの名前。



「・・・藤田さん?」


喉がからからになる。


けど耳に全神経を集中させて、声を聞き逃したくない。


久々すぎるくらいの藤田さんからの着信。


「どしたの?」


周りのノイズは耳に全く入らなくなる。



何を話していいのかわからず、ぎこちなくなる。




「・・・今日、会えるか?」


携帯の奥の声に紛れている人の声。


仕事場なんだろうな。


煙を吐き出しているような少し長い息の吐かれる音。






「うん、大丈夫だよ」


嬉しいはずなのに、


あの日から藤田さんからの誘いがなくて久々で手放しで喜びたいはずなのに


そう言いながら、別れ話を示唆してしまい、本当は泣きそうになった。




怖くて仕方ない。


あたしが妊娠した、


藤田さんから言わせれば「妊娠させてしまった」、


その事実があるから藤田さんがあたしの側にいてくれているんじゃないかって。



本当は、


とっくのとうに


あたしから離れようと思っていたんじゃないかって。






小さな子供がおもちゃを欲しがって意地のように地団駄踏むみたいに


あたしは余計に藤田さんと離れるのが怖くなっていた。


そう思う気持ちがあたしのなかで日々大きくなって、


だから、



あたしは「妊娠した」「赤ちゃんを堕ろした」と言う事実で都合のいいようにいつまでも


藤田さんを束縛しているんじゃないかと。




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