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「あたしは大丈夫だから、一人でいられるから、







                     藤田さんはもう帰って。












お願い」












大丈夫な筈がないのに、






今にも泣きだしそうな顔をしているのに、



無理して美弥は笑っていた。















その目を俺と合わさないように言葉を紡ぐ。




目を合わせたら、俺が何を口に合うするのかわからないから。




でも恐らく、今の美弥を悲しませるような、苦しめるような言葉を羅列しそうな気がする。









何の迷いもなく。
























  二人のはじまり another story        Compensation 4**






























それくらいに自身を庇護して、



現実と非現実の区別がつかないくらいに頭が混濁している。
















俺は、




誰よりも大事な彼女に、












小さすぎる命の光をその手で消させてしまう。












俺はまた人を傷つけて、自分自身の体裁を繕おうしているんだろうか。







いつも誰かの犠牲の上にいて、




何が満足なんだろうか。










そうまでして、自分を冷静に保ちたいんだろうか。














男の俺がいるにはそぐわない場所の玄関を出た瞬間、





いつもなら決してないのに、












              涙が溢れ出して、足ががたがた震えた。





過ぎ行く人の波が驚いたように俺の姿を見て、またいつもの日常に帰っていく。









当たり前に自分には関係ないことが起きているとでも思いたげに













その涙は



美弥を傷つけてしまったという後悔の念と、









育まれる最中でその命を断たれてしまった子供への懺悔。













俺が涙を流したところで、



払拭できない罪が抗われるわけでも、












美弥がいつもみたいに爛漫に笑ってくれるわけでも、










今、あの場所で『処置』を行われている子供が戻ってくるわけでもない。


















それくらい頭ではわかっているのに、



身体がその思考についていかない。












わかっていた。




わかっていたはずなんだ。












今までの俺なら。




今までずっと不特定のオンナとずるずると関係を持ってたなら、










あの日のコトが、どういう結果を生むのか、


あの小さい身体の美弥に大きな傷をつけてしまうのはわかっていたはずなのに。







なのにそうでもしなかった俺は過信していたのかもしれない。









美弥は俺の我が儘を全て受け止めてくれる。







                 愛してくれている、と。








感情を履き違えていた。


















彼女との子供が欲しかった。















物心がついた頃から疎まれ続けた家庭とは全く違う、



幸せな家庭に、年甲斐もなく夢を見ていた。












今度こそは幸せになれると思ったんだ。




美弥と幸せになりたいと思っていたから、










こうなるなんて、




美弥の妊娠を知ったときは後先のコトをあまり考えずに




結果を想像もできないままでいた。













最初からわかっていたらこうはならなかったのに。



少し考えれば簡単にわかるコトだったのに、



現実から、










目を背けていたのは俺だった。














美弥はまだ未成年で高校生で、




前までの俺ならガキとしか扱わなかったようなくらい幼いのに。

























入口前にしゃがみ込んで、どれくらいの時間が経っただろう。










「藤田さん・・・」




小さな声だけどしっかりその存在を顕す声。











振り返った先には、




愛おしいのにボロボロにしてしまった美弥の姿。



俺よりも比にならないくらい小さくて、簡単に壊れてしまいそうな美弥を、












こうしたのは紛れも無い俺なんだ。











罪の意識がどんどんと影をみせ染め行く。


















それも日常、善悪の云々をあたかも善人のように説いてるのに。




そんな俺は美弥の瞳にどう映っているんだろうか。













傷つけたのに、今の俺には何を渡すコトもその立場さえもない。


それなのに美弥は俺を責めようとさえせずに、乞う。















何かを与えられるなら、




「今、美弥を抱きしめられるなら、








どんなことをしても、守る、べきだった……」















美弥と子供を。
















俺が美弥に、そして初めてできた自分の家族に与えた傷はあまりに広く深くて、















自分の不甲斐なさに、















泣き顔なんて見られたくないのに、




美弥はただ黙って、














無責任な俺の身体を抱いた。







美弥は、



こんな俺でも愛してくれている。









じゃあ、俺は美弥が与えてくれる愛情に見合うくらい、






美弥を愛して、大切にしていただろうか。












『愛』なんて都合のイイ言葉に




ただ心酔していたんじゃないのか?














抱きしめられた美弥の身体から伝わる体温と、





その胸から聞こえる鼓動。










美弥から嫌というくらい感じる、人の温もり。














それから得られる心の安寧が欲しかったのに、





今はその美弥の温かささえ、



















                  怖い。

















ホントは愛おしくて仕方ない筈なのに。







もう俺にどうするコトもできない。




ただ、








「ごめんなさい」














何度呟いたか、わからない。





















恥じらいなど一切なく、ぼろぼろ泣いていた。





















美弥の手が、背を撫でる。





「泣かないでよ、藤田さん」









その声が、むせび泣く子供を宥めるような温かい手が




あまりに優しくて、



















泣くコトなんて当の昔に忘れたのに、抑えることが出来ない。





















「あたしは大丈夫だから」





美弥が手術を受ける前と同じ言葉を繰り返す。

















「いつもの藤田さんでいてよ」










俺が望むコトは




どれだけかかってもいいからまた美弥に笑って欲しい。











「お願いだから、もう泣かないで?」










美弥の温かくて、俺から比べれば小さな両手が頬を抱きながら、俺の涙を拭う。



見つめられた瞳は涙が溜まっているけど、







俺をしっかりその中に捕らえていて、






















俺はこの瞳に幾分かは救われるような気がした。










「ねぇ、藤田さん」















美弥がその口から言葉を紡ぎ始めた。














「あたしの前からいなくなるなんて考えないでね」









優しくて、それ以上に泣きそうな声。


















「藤田さんがいなくなったらあたし、ホントに一人になっちゃうから」




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