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 夜。
 辺りは闇に包まれ、街の窓から漏れ出る光が周囲に濃い影を落としている。石畳の道を三つの影がゆっくりと動いていた。
「どうして歩いていくのよ。馬車なら用意できたのに」
何を考えてのことか、全身黒尽くめの、体のラインを強調するような革のスーツ――本人は『戦闘服』と呼んでいたが――を着込んだ少女、ユリスはぶつぶつと不平を漏らす。長い髪は彼女の後ろで一つにまとめられゆらゆらと揺れていた。
「馬鹿か?これから盗みに入る奴がパカパカ音を立てて乗り込むかよ」
タキが呆れたように言った。
「あら、正々堂々としてて、いいんじゃない?」
「…はは…」
乾いたため息を漏らして、コウは力が一気に抜けていくのを感じる。
「それにしても、何でそんな服着てんの?」
コウの問いにユリスは胸を張って答えた。
「どう?格好いいでしょ。昔からドロボーは黒尽くめって決まってるのよ」
そして美少女泥棒はこの美貌をさりげなくアピールしなくっちゃ――言葉の最後のほうは完全に無視されたが本人はいたって満足しているようである。
「とにかく、グリュニーの屋敷へは歩いていく。嫌なら引き返せ」
「嫌よ。ついて行くって言ったでしょ」
タキにユリスが言い返す。
「静かにしろよ。ずっとそうやって行くつもりか?」
コウがたしなめたが結局グリュニーの屋敷までこの口論は続いた。

 「ここよ」
三人はグリュニー邸裏門から脇へ一本入った小道から闇夜に重々しく佇む屋敷を眺めやった。裏門とはいえ、警備の人間が寝ずの番をしている。正門前はもっと厳重な警備が敷かれていた。さすがに正門からの侵入をあきらめて――「泥棒は裏から忍び込むのが常識よ」という少女の言葉は無論相手になどされていないが――裏門へと回ってきたのだが。
「うへ~ここまで来るのに30分近く経ってるじゃないか。ったく、どんだけ広いんだこの屋敷は…」
コウはタキが隣の少女を指差しながら、こいつの家のほうがよっぽど広いぞというのを聞き、さらにげんなりする。
「とにかく強欲な奴なのよ。すごいけちのくせに自分の財産を守るためなら大金をも惜しまない。正門があれだけ派手に警備されてるのは、他人に自分の力をアピールしたいだけ。ちっぽけな男よね~」
「しっ。さぁ、おしゃべりはここまでだ。いよいよ仕事だぞ…君、俺たちの邪魔だけはしないでね」
口元に指を当て、不敵な笑みを浮かべる。そんな相方をいささか不安げに見つめながらタキは口を挟んだ。
「とりあえず、中を見てくるから、それからだな。できるだけ警備の注意を逸れさせられられるといいんだが…」
言いながら、タキはおもむろに着ていたジャケットのポケットから小さな玉を取り出した。
「…なに?これ…」
それを手渡されたユリスがタキに尋ねる。
「もっとけ。たぶん必要になる。とにかく、俺たちの邪魔はするなよ」
ぶっきらぼうにそれだけ言うと、タキはコウを見た。
「…そろそろか?」
「ああ。こいつを頼む」
「おう」
軽く言葉を交わして、二人はそれぞれの役割を果たすべく行動を開始した。
 闇夜を一羽の鴉が飛ぶ羽音が微かに聞こえていた。

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