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 階段を駆け下りながらユリスはたった今起こった出来事を思い返していた。一体何が起こったというのか。突然、圧倒的な力が二人を襲った。あれは一体なんだったのか。
 何故。
 思いを巡らせて、ふとある結論に至る。
 あの剣。イモートゥル・プロスペリティ。
 剣自体に魔法が宿っているという、あの剣。あの剣の力が、彼らを襲ったのだ。あの男――グリュニーは知っていたのだ。だから、余裕の笑みを崩さなかった。ならば。
――私が取り戻すしかない。
二人はきっと今も戦っている。ならば自分が隙をついて剣を取り戻すしかない。
 ユリスは足を止めた。振り返って様子を探る。全神経をグリュニーの部屋へと向けた。大きな音がした。ガラスの割れる音。不吉な予感が胸をよぎり、息を呑む。ユリスはゆっくりと足を向けた。たった今逃げ出してきたその部屋の方へ。

 圧倒的な力が自分の体を襲ってから、再び光を感じるまで、一体どれほどの時間が経過していたのか、わからなかった。ほんの一瞬だったような気もするし、永遠にも等しい時間だったような気もする。とにかく、再び目を覚ましたのは、よく知った男の声が聞こえたからだった。
――当たり前だ。
声にならない声で応える。この程度の衝撃で死ぬわけがない。声の主の苦しそうな様子は気になったが、自分以上に頑丈なあの男がそう簡単にくたばるとも思えなかった。起き上がらなければ、そう思っているのに、いくら命令しても身体が言うことを聞かない。もしかすると、まだ夢現をさまよっているのか。
 すぐ傍で大きな音がする。それが何の音だったのか、理解するまでにまた時間がかかる。
 タキがその事態を理解したのは、彼が現実へと引き戻されるのと同時だった。

 先ほどの衝撃とはまた別種の衝撃が男を襲った。突風は分厚い部屋の壁ではなく、薄氷のようにもろい窓のガラスへと彼を叩きつける。押さえつるような圧に息苦しさを感じながら、それからすぐに解放されることも悟っていた。接触を知覚したその次の瞬間には、冷たい夜気が肌を撫でるのを感じる。それがどういうことかわからないほど愚かではない。
――ちっ。
短く舌打して、自分がどこへ向かっているのか、あと数瞬のちには起こるであろうことについて思い巡らす。普段の自分ならば、この程度のことは大したことではない。魔法が使える自分なら。
――できるか?
自分に問い掛けて愚問であるとすぐに思い直す。できるかどうかではない。やらなければいけないことだ。そうしなければ、自分の命はないし、依頼も果たせない。そう、あの少女の。白くなるほど拳を握り締めて、唇を噛んでいた少女の。
 だから。
 ここで終わるわけにはいかない。
 コウはその言葉を繰り返していた。


 コウが放り出されたのは完全な中庭――の真上だった。四方を建物に囲まれている。中庭というには広すぎるのかもしれないが、いくつかの樹木と白い玉砂利の敷き詰められた庭はそれなりに美しいものだった。
――このままだと叩きつけられる。
埒もないことを思い、何とか着地を試みる。幸いなことに、彼の真下には葉を茂らせた庭木が植えられていた。
 空中で一度回転する。タイミングを見計らって木の枝へと手を伸ばした。幹のひんやりとした感触が肌を伝わる。これでさらに勢いを殺すことができた。
 と、思った瞬間、枝が乾いた音を立てて折れる。
「うっそ~ぉ」
コウは枝をつかんだまま玉砂利の中庭へどさりと落ちた。
「ってー。っちっくしょー。あのタヌキ、ただじゃすまさねぇ」
腰をしたたか打って、毒づく。いっしょに降ってきたのだろう、ガラスの破片が玉砂利に混じって微かに光を放っていた。
 「っつ!」
頬を掠めた光の糸に、コウの緊張が高まる。背後の木の幹に光る何かが突き刺さっていた。ユリスと自分を襲った光の破片によく似ている。
「やっぱりな…」
独りごちて光が飛んできた方向へと向き直る。中庭は四方を建物に囲まれているせいか、濃い影があたりを包んでいる。それでもうっすらと周りが見えるのは、屋敷内から漏れ出る明かりのせいだろうか。
「いるのはわかってんだ。でてこいよ」
人差し指を手繰るように動かして、何者かを挑発する。植木や茂み、ひょっとしたら建物の中。隠れるところは結構ある。
「なんだ、案外臆病なんだな。こそ泥相手に怖気づくとはね」
こんな簡単な挑発に、相手が乗ってくるかどうかは怪しかったが、しないよりはましだった。敵の正体もわからないままでは、勝機の見出しようがない。しかし、相手は意外と単純な性格の持ち主だったようだ。コウとは対角に位置する植え込みからがさがさと音がする。一人の人影が現れた。
「よぉ。あんたか、さっきから俺たちを攻撃してたのは?」
大げさに両手を広げて見せながらコウは言った。男の顔が仄かな灯りに照らされる。長髪の男だった。首の後ろでゆったりと結わえている。二十代の後半といったところだろうが、なんとなく老けた印象を与える男だった。コウと同じように黒尽くめであったが、どこか見慣れない服だった。首までしっかりと覆われた上衣は脹脛のあたりまで丈がある。腰の位置から左右に分かれていて、その中に下衣が見えた。こちらは割と身体にあわせて細身に作られているようである。
「いかにも。こそ泥ごときに名乗る名など持ち合わせてはいないが、二度も私の攻撃を避けた褒美に聞かせてやる。我が名はロードだ」
勝手に話を進めている。勝ち誇った表情を浮かべて一歩、二歩と前へ歩いてくる。コウとの距離が幾分縮まったところでロードは歩みを止め、再び語り出した。
「こそ泥よ、貴様、なかなかの技量を持っているだろう。なぜ、泥棒ごとき汚らわしい仕事をしている?仕官すれば雇ってくれるところもあろうに」
「そのこそ泥に二度も攻撃をはずされたあんたこそ、どうせあのタヌキに雇われた兵隊だろうが」
「いかにも。あの男は私の能力に対して正当な報酬を払ってくれたのでな」
金が全てだ、と言い切った男に、コウは同感、と小さく呟いてから言い放つ。
「悪いが、俺にもスポンサーがついてるんでね。仕事はさせてもらうぜ!」
「こちらも契約はきちんと守るほうなのでな。させんよ!」
コウは走り出す。何か策があるというわけではなかったが、なんとなく、目の前にいる男が何者なのかわかってきていた。


 ――コウ!
タキは目覚めるとすぐに、粉々に砕けた窓から外へと飛び出した。見ると、コウは庭木の枝につかまり着地を、――失敗しているところだった。その様子を呆れながらも、どこかほっとして見ている自分に気づき、苦笑する。こうして空を飛んでいられるのもあとわずかの時間だ。今までの経験でそれを知っている。それまでに、この身体だからこそ出来ることをしてしまわなければならない。夜空からグリュニーの寝室を覗き込む。グリュニーが満足げに笑んでいた。その不快な笑顔に怒りが込み上げてくる。と、部屋の扉が開き、一人の少女が飛び込んでくる姿が見えた。よく見慣れた少女。
『ユリス!』
思わず叫ぶ。逃げたはずではなかったか。彼女はなぜ戻ってきた。言いたいことは色々あったが、とにかく、タキは再びグリュニーの寝室へと舞い戻った。

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