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 はぁ~、と文字になりそうなため息をひとつ。
 めぐみは高杉の家をあとにして一人、警視庁へと向かっていた。
 昨晩の泥酔は明らかに失態だったと思う。おまけに部下である高杉にまで迷惑をかけてしまった。疲れが溜まっていたからだとか、藤田に腹を立てていたからだとかそういう言い訳地味たことは言いたくなかった。だから、なおさら自己嫌悪になる。
 はぁ~、ともう一つため息をつく。
 もうすぐ時効だというのにまったく手がかりのない犯人の行方にも、うんざりした。朝の通勤ラッシュで人々が黙々と歩いている。日々の疲れを溜め込んだような暗い表情の人も何人か見かけた。自分もあんな表情をしているのかと思うと、さらに気が沈んだ。


  「すいません、刑事さん」
呼びかけられて振り向くとそこには長身の黒服の女が二人立っていた。一人はサングラスをかけている。刑事、という単語に反応して立ち止まったものの、声の主には見覚えがなかった。往来のど真ん中で立ち止まっためぐみと、呼びかけた二人組みを、障害物を裂けるようにして人の流れが割れていき、そしてまた合流していた。
「奥様を」
サングラスの女が隣の女に耳打ちする。言われた女は軽くうなずいて、どこかへと走り去っていった。
「椎名、警部…ですよね」
「なんですか?あなたたち」
見るからに怪しげな身なりの女にいぶかしげな視線を投げかける。めぐみは自分を刑事と呼んだこの女に警戒心を隠そうともしない。
「申し訳ありませんが、私と一緒にこちらへ来て頂けませんか」
サングラスの女は言った。無機質な硬い感じのする声だった。
「その前に、どうして私が警察官だとわかったのかしら?」
めぐみが軽く腕を組みながら、きちんとサングラスの女に向き直った時だった。
「それには私がお答えいたしますわ」
「奥様…」
サングラスの女の肩越しに先ほどの女が一人の女をガードするように歩いてくるのが見えた。奥様と呼ばれたその女はめぐみの前まで進み出ると、微笑んで言った。
「お疑いになるのも無理ありませんわね。でも、私たち、今日が初対面じゃありませんのよ。あなたは覚えてらっしゃらないかもしれませんが――」


 女の話というのはこうだった。
昨夜、泥酔しためぐみが上着を肩にかけ、時には振り回しながら、大声で演歌を歌っていた時、めぐみの胸ポケットから警察手帳が落ちたのだという。その時に、めぐみの顔と名前を知ったというのだ。警察手帳はそのまま――どうやら高杉に――手渡され、今日、警視庁へと出勤するめぐみをここで待っていたということだった。


 「それはどうも、ありがとうございました」
警察手帳を拾ってもらったことに対しては、素直に礼を言う。ニコニコと微笑んで話す女とは対照的に、めぐみの顔は真っ赤に染まっていた。深深と頭を下げためぐみに対して、女はお気になさらずに、と言った。グレーのベーシックなスーツ姿だったが、どこか柔らかい印象を受けたのは緩やかに上げられた髪形とその物腰のせいかもしれなかった。めぐみよりいくらか年上だろうが、まだ若い。
「…あの、警察手帳を拾っていただいたっていうのはわかりましたけど、どうして、私を待っていたんですか?」
「ここではちょっと差し支えがございますので、どうぞこちらへおいでください」
サングラスの女が口を挟んだ。確かに、ラッシュはピークを迎え、道に立ったままのめぐみたちに冷たい視線を浴びせていく人々もいた。何かを話すには落ち着かない空間ではあった。
「冴木、口を挟まないで」
「…申し訳ございません」
穏やかな印象とは裏腹にぴしりとサングラスの女――冴木に言い放つ。
「…でもまぁ、確かにここではなんですから、ちょっとこちらへ来て頂けませんか?そんなにお時間は取らせませんから」
「あ、それなら署のほうでお話伺いますけど…」
警視庁はもう目と鼻の先だ。わざわざ路上で話す必要もないし、かといって、見知らぬ女たちについて行くのも気が引けた。
「い、いえ。それほど重要なことでもありませんから――」
言って女はめぐみの手を強引に取り歩き始めた。前後を黒尽くめの女がガードしながら進む。
 表通りから一本脇にそれた通りに一台の車が止まっていた。高級車である。一本奥へ入っただけで人通りは格段に減っていた。
「――話というのは、実は、パーティーにご招待いたしたいんですの」
「パーティ?」
予想だにしなかった言葉に、めぐみは思わず聞き返した。冴木、と女はサングラスの女から小さな封筒を出させ、めぐみに見せた。
「これですわ。ぜひ…昨日の方もお連れになって」
昨日の方というのが高杉のことであるのはおそらく間違いなかっただろうが、どうにも解せない。
「どうして、私たちを?」
「…深い意味はありませんわ。ただ、昨日偶然お会いしたあなたをぜひ招待したいと思っていただけですの。必ずいらしてくださいね。お二人で…」
「あなたは――」
何者ですか、そう問おうとしてさすがにそれは失礼ではないかと、言葉を選んでいるうちに女の方から名乗った。
「申し遅れました。私、神原櫻子と申します。椎名さん、ぜひ、おいでくださいね」
最後にもう一度だけそう言うと、櫻子は停めてあった車へと乗り込んだ。ずっとそばに控えていた黒服の女が一礼して運転席に乗り込む。
 なにがなんだか、状況が飲み込めないままのめぐみをその場に残して、櫻子を乗せた車は走り去った。


 めぐみの手には白い小奇麗な封筒が残されていた。

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