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 宿を含む、街全体が揺れているような気がして、コウは目を開けた。ベッドに横になってはみたものの、夜はなかなか寝付けない。こんな仕事をしているせいで、すっかり夜型のリズムに慣れてしまった。かといって、昼間は昼間でタキがうるさいから眠れるわけでもない。
――一体、いつ寝てるんだ?
苦笑して身を起こす。こんなこと、あの見た目だけは愛くるしい相方が聞いたら、こう言うに決まってる。いつも寝てるじゃないか、と。
 「もっと眠りたいんだけどなぁ」
他愛のない思考を振り払い、伸びを一つ。街の異変が気のせいではないことを確かめて、窓のそばへ近づいた。窓枠に溜まったわずかな埃が細かく振動している。
「来たな」
と、同時に、部屋のドアが勢いよく音を立てて開いた。モウリアだった。
「き、き、きききき・・・」
壊れたおもちゃのように、ききき、と歯の間から音が漏れる。
「落ち着けよ。やっと出てきてくれたんだから」
窓の外へと目を向けたまま、コウは言った。頼りにしていた月は、雲にその姿を隠されている。目を細めたが、怪物の影も見えない。
「何をぼぅっとしてるんですかっ!来たんですよ!怪物がっ」
堪らなくなってモウリアが叫んだ。額には冷や汗がにじみ、髪も乱れて、額に数本張り付いている。
 「うーるーさーいーなーぁ。正体も判らないんじゃどうしようもないだろうが」
緊張感のない青年に、むっとしながらも、モウリアは部屋に入ってきてからずっと感じていた違和感の原因に気がついた。
「あの、お連れの方は?」
あちらの少年の方が、まだ頼りになりそうだったのに――落胆と苛立ちが入り混じった思いで、コウに訊ねた。
「ん?あ、ああ、あいつなら――」
コウの言葉を遮るように、闇の中をさらに闇色の影が横切った。そのままコウのすぐ脇――窓の淵に止まる。モウリアが目を凝らすと、それは漆黒の鴉の姿をしていた。
「・・・鳥?」
「これ?これは、俺のし・も・べ」
『誰が僕だ、誰が』
コウの台詞に反応するように、コウの耳に聞き慣れた声が届く。コウは軽く腕を組み、苦笑をもらして、モウリアへと向き直った。
「あいつは・・・まぁちょっと事情があって今は姿を見せてないけど・・・大丈夫、任せろ」なんとなく口の悪い青年だ、とモウリアは小さくため息をこぼした。自信満々のようだが、果たして本当に大丈夫だろうか。
 モウリアの心配をよそに、コウは窓を開けた。心地よく冷やされた空気が部屋に流れ込んでくる。と、同時に街に響く怪音もよりはっきりと聞こえた。
「頼んだぞ」
コウが小声で囁くと、鴉は夜のシェナの街へと飛び立った。モウリアには、鴉が飛び立つ瞬間、小さく頷いたように見えた。



 タキは夜の街を見下ろしながら、音のする方へと体を向けた。夜中のある時刻を過ぎると人型から変化する身体になって、久しい。真っ黒な闇の色にも慣れた。初めのころはこんな自分を呪いもしたが、今ではかなり気に入っている。この体質のおかげでこういう商売を続けていけているとも言えた。
 鴉――タキは大きく翼を羽ばたかせる。瞳には小さな魔法具が嵌め込まれていた。この魔法具を瞳に取り付けることによって、夜の街でも昼間のように見渡すことができる。
 魔法具とは、人間本来が持つ魔法を増幅させ、ある種の効果を生み出す道具だ。魔法具によって生み出される効果は、その魔法具の性質に左右されるが、基本的に体内の魔法を一時的に増幅させるだけだから、使える時間は限られているし、使用後の魔法の極度の消費による疲労で連続使用は難しい。けれどもそれでも魔法具の需要は絶えない。すべての人間が本来的に備えている力――魔法――をその才能の如何にかかわらず誰もが使うためには、魔法具の存在は不可欠なのである。ちなみに、タキが現在使用している魔法具の全てが自作の品である。魔法具を製造、販売することがタキのサイドビジネスであった。

 ――のんびりしている場合じゃないな。
タキはひたすらに怪音を辿り、怪物の正体を見極めるべく高度を下げた。先にも述べたように、魔法具は永久的に使える代物ではない。時間が来れば、はいそれまでよ、である。その後の疲労のことも考えると、のんきに夜間飛行を楽しんでいる余裕はなかった。
 怪音は広場から東のほうへと移動していた。宿とは反対の方向だ。入り組んだ通りを避けるため、屋根の上ぎりぎりを飛んでいく。怪音に近づくにつれ、建物や通りが地震が起こった時のように振動しているのに否が応でも気づかされる。
 怪音は大きく角を曲がって動き続ける。タキは先回りをするべく、速度を上げた。角を曲がりきったところで待ち受ける。怪物の影を捉え――。
 今まさに怪物の正体を掴もうとしたその時、タキの視界が赤く反転した。今まで見えていたものが途端に闇に溶け込んでゆく。
――しまった!
時間が来た。魔法具の効果が切れだした。鴉の姿であるタキにはこれ以上ここに留まっても危険が増すだけである。見えない視界を頼るわけにもいかず、感覚だけで重力に逆らって舞い上がった。
――しくじったな・・・。
怪物は目の前を飛び立った黒い影には気がつかなかったのか、移動し続けていた。タキは怪物の奏でる音が遠ざかっていくのを上空から感じていた。



 「あーあ、しょうがねぇなぁ」
翌日、後頭部で手を組み、椅子にのけぞっているコウに、タキは憮然として睨み返した。
「仕方がない。魔法具の効果時間が計算よりも短かっただけだ」
「それにしたって、せめて怪物の正体だけでも掴んでほしかったぜ?」
あくびをかみ殺してコウは言った。相方の少年を皮肉ってはいるが、彼もまた昨日から今朝まで眠っていない。必要以上に怯えるモウリアをなだめすかして落ち着かせるのは思った以上に骨の折れる作業だった。
 タキは昨夜の怪物の様子を思い浮かべた。一瞬とはいえ、相手の正体を捉えかけたのだ。
「本当に一瞬だったけどな――」
思い出すように一度目を閉じて、タキは続ける。
「怪物の姿は・・・――」
「ん?怪物の姿は?」
言いよどんだタキを、コウが促す。タキは卓まで歩み寄り、湯気を立てているマグに口をつけた。
「タキ。見たんだろ?怪物の姿」
首だけ向けて、コウが再び訊ねると、タキは小さく首を振って答えた。
「・・・いや、やめておく。どうせ言っても仕方がない」
「はぁ?どういうことだよ?」
見たんだろ?見たんなら言えよ、とコウは立ち上がった。コウより頭ひとつ分ほど背の低いタキは、コウを見上げるようにして言い返した。
「じゃぁ言ってやるよ!でっかくて、黒くて、がぁぁっとしてたよ!!」
「・・・はぁ?」
コウが呆れたのも無理はない。これではモウリアの説明と大差ないではないか。しかし、タキにも言い分はあった。少年にはこれ以上、怪物をうまく表現する語彙を持ってはいなかったのだ。むしろ、これ以上にぴったりと怪物のことを言い表す表現などこの世には存在するはずがないと思われた。
「お前も、実際に見てみればわかる」
「はぁ?」
「上手く言葉にできるような奴じゃないんだ」
一気にマグの中身を飲み干して、それだけ言うと、深くため息をついた。
――あれは一体何だったんだ・・・。
黒くて巨大な塊。今さらながらに、魔法具の効力が切れてしまったことが悔やまれる。自然、タキの表情は暗く沈み、視線が床の小さな染みに縫いとめられる。
「・・・しょうがねぇな」
コウは先ほどと同じ台詞を繰り返した。ただし、そこに相手を皮肉るような雰囲気は無い。頭をかいて腕を組んだ。
「今さら悔やんでもしょうがないし。タキが見れば判るってんなら、そうなんだろ。別に責めてるわけじゃねぇし。あ、そうそう、明け方まであのモウリアのおっさんがここに居たんだけど、今日は市長が訪ねてくるらしい。面倒くさいから別にいいって言ったんだけどな。どうする?会うか?」
「市長というなら、会わない訳には行かないだろう。確かに面倒だがな。それが終わったら、ちょっと付き合わないか?」
渋々といった態ではあったが、タキは市長と会うことを了承した。自分達が夜を仕事場としていたとしても、世間は普通に昼間を生きている。まぶたが降りそうになるのを必死に堪えながら、熱いコーヒーのお替りを2人前、ボーイに注文した。

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