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「そ、だよね・・・・・。あたし、ウザかったでしょ? ごめんね」 笑おうとすればするほど、表情は歪んでいく。 頬を伝う涙の感触。 「美弥・・・・」 それじゃなきゃ、そんな哀しそうな顔しないよね? キレイな顔に落とされた暗い影。 あたし、初めて見たよ。 けど、もしかしたら、それが本当の藤田さんだったのかもしれないね。 ホントは、すごく脆くて、小さくて、あの子と同じ。 ガラス細工みたいな人。 「ごめんね、ホントに、・・・・・・ごめんね」 ごめんね、今まで気づかなくて。 ごめんね、苦しめちゃって。 あたしなんかの所為で。 藤田さんが、どうしてこんなに辛くならなきゃいけなかったんだろうね。 最後のほうは一人で捲くし立てて、 「あたし、もう、ここにいないほうがいいでしょ?」 藤田さんからの言葉を待たずに、その場から逃げた。 こんな、哀しい別れ方、誰が想像できたの? 二人のはじまり another story Compensation 8** 泣き叫ぶコトもなく、溢れて溢れて仕方ない涙。 真っ赤に腫れた瞼。 くしゃくしゃに乱れた、あんなに好きだといってくれた長い髪。 キレイに並んでいた携帯のメモリ番号が一つ抜けた。 その人の存在が、あたしの中では大きくなりすぎて、どれだけ白く塗りつぶそうとしても、 そうしようと思えば思うほど、 藤田さんとの記憶はあたしの中で色濃くなってしまう。 でも、これでよかったの。 こうするコトしかできなかったの。 そうするコトがあたしと藤田さんにとって一番の幸せの選択だったの。 そうでしょ、ねぇ。 人でごった返す、ネオンの灯る繁華街。 街路樹の植え込みに座り込んだ。 帰路を急ぐサラリーマン。 遊んだ帰りなのか、制服姿の高校生。 むせるくらい香水を振りまいたオネエサンタチ。 暗がりにたむろする、あたしとそう歳の変わらないオニイサンタチ。 あたしの周りでどんどん時間が過ぎる。 外の風は冷たくて、手が、足が、顔が悴んでゆく。 当たり前だよ、季節は真冬。1月なんだから。 ここで、周りの人と時間を共有すれば、寂しくないし、あたしも楽しくなれそうな気がしたんだ。 「カノジョ、何やってるの?」 目の前に陰ができ、見上げるとあたしと同い年くらいの私服姿の男の子だった。 「え・・・・」 何もしていないというのが事実で答えに悩んだ。 「ってか、どうしたのさ? 泣きはらした顔で」 想像以上に、ハイスピードの展開。 カレは“よっこいせ”と声を出しながら、あたしの隣に座り込んだ。 キレイにスタイリングした黒髪。 愛嬌のある瞳に、カジュアルな着こなしは、最近流行のアイドルを髣髴させるようないでたち。 でも、どこかに軽さを感じる。 「何かあった?」 どのくらい、心配しているのかわからないけど、カレはあたしの顔にかかった髪を梳くようにしながら、 目が合う。 あたしの顔を覗き込んだ。 「こんな可愛い顔が台無しじゃん」 ニコニコと薄っぺらい愛想を振りまく微笑。 「あ~あ、瞼まで腫れちゃって、目が真っ赤」 「えと・・・・」 「ああ、ごめんね。言いたくないよね」 俺ってデリカシーないね、ごめんね。なんて言いながら、カレは豪快に欠伸をした。 「忘れたい出来事が立て続けに起きただけ」 ぽつり。そう、口をついた。 もう何もかも忘れたいよ。 藤田さんと出逢ったコトも、 初めてこんなに人を恋うたコトも、 赤ちゃんのコトも、 ・・・・何もかにもすべて。 そう思いながら、また涙が溢れた。 「ごめんなさい・・・あたし」 僅かに香った煙草の匂い。 その香りは、また哀しい波を起こす。 頬も、膝の上で握り締めた手も冷たく、びしょ濡れになってゆく。 冷えた身体はよけいに冷たくなった感じがした。 「こっちこそごめんね。オレ・・・・」 こんなときに無理だよね、そうカレは笑った。 ちょっと気まずそうに。 あたしはまたひとりぼっちになった。 ねぇ。 あたしが、もし。 歳相応の恋愛をしたら、次に愛する人を見つけるコトができたなら、 忘れられるのかもしれない。 あの茶色い長めの髪も、 誰もが見惚れるくらいのキレイな顔も。 陰のある雰囲気も。 少し着崩したセンスのあるスーツ姿も、 いつも吸っているパーラメントの匂いも、 あたしを思って囁く、少しぶっきらぼうな優しい言葉も。 あの部屋で過ごした日々を、 あたしに刷り込まれた全てを。 本当は忘れたくて仕方ない。 それでも、それでも、 あたしは、この場所から歩くコトなんてできない。 もう、限界だよ。 何もかもが限界過ぎて、どうしてイイのかわからない。 助けて、助けて、・・・・・助けて。 あたしには、あなたしかいないんです。 あなたに嫌われるコトも、 あなたを嫌うコトも、 あなたと過ごした日々を忘れるコトも、 あたしには、できません。 あたしにはやっぱり、あなたしかいないんです。 |
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