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嘘を言うときは、
どうして、
いつもそんな表情をするの?
どうして、自分を傷つけようとするの?
そんなことまでして、
自分を苦しめるあなたのことが心配で、
しかたないの。
二人のはじまり 。。。6。。。 うそつきの言い訳
まだ薄暗い部屋。
「・・・美・・・弥っ・・・」
その声が聞こえてしまうと自然と目が開いてしまうのはいつからだろう。
多少、意識はしっかりしないけど、
いつもと様子が違う彼にはすぐ気づいてしまう。
そもそも、こんな中途半端な時間に帰ってくるっていう行為じたいが
彼にとってはおかしな話なんだけど、
そこには目を背けていたかった。
これから言われること、行われることに予測がつくほど、
本当にいつもと違っていた
崩れた髪型も
不自然なシャツのシワも
そして藤田さんの表情も
私は今、ここにいてはいけない人間のような気がして、
すごく辛い。
こんなことなら昨日一人で寂しくて泣きながら待つことはなかったのに。
手の甲で、軽く乾いた頬の涙のあとをこすって、
「おかえりなさい!」
いつもと変わらない風に抱きつくけど。
藤田さんからの何の応答も感じられない。
その代わりに・・・といっては少し変だけど、
空白の時間に何があったのかを、
すべて教えてくれるかのような藤田さんのシャツ。
いつもと同じようにタバコの匂いと、そのウラに見え隠れする
藤田さんのものでもあたしのものでもない、甘い大人の香水の香り。
「最近、カレシが浮気してさぁ」
「どうしてそんなことわかるの?」
つい1週間前のお昼休み。
一緒にお弁当を食べていた友達がお弁当箱のおかずに箸を刺しながら言っていた。
「どうして・・・わかるの?」
「美弥はカレシと順調だから、わからないかもしれないけどさ、
あれだけあたしと違う香水の匂いつけて帰ってきたらわかるって」
今ならその言葉の意味がすごくよくわかる。
どうして
「・・・どうして・・・?」
目の前のシャツをつかみながら、
涙があふれて仕方ない。
「あたしのこと、嫌い?」
そうなら、素直に言ってくれたほうが何倍も楽でいられるから、
あたしが藤田さんを嫌いになる前に、
「ごめん・・・」
小さな、喉の奥から絞り出されたような藤田さんの声。
でも顔は見ることができない。
今、藤田さんがどんな表情でこの言葉を言ったのかを確かめることが怖い。
「俺では、美弥のこと幸せにできないから・・・・
アイツのとこ、行けよ」
アイツって・・・高橋くんのことだ。
やっぱり気になってたんだ、高橋くんのこと。
おとといの夜はそんなことないみたいな素振り見せていたくせに。
「あたしがどうしたいかは、あたしが決める」
そばにいたいのは藤田さんのところ。
・・・お願いだから、そばにいさせて。
とりとめもなく流れる涙は
藤田さんのシャツに小さな染みをつける。
「俺が、・・・今、何してきたかぐらいはわかってるよな」
わかってる。
「こんな男のとこにいたら、辛いのはお前だけだから」
それが理由ですか?
あなたが言う別れの理由は
「わかってんなら、どうして俺の前から消えないんだよ!」
体を引き剥がされる。
肩に置かれた藤田さんの両手には力が入っていて。
イタイ。
表情は言葉とは裏腹なくらいすごく切ない。
そっちのほうが余計にあたしの胸を締め付けて痛くなる。
あたしが辛い想いをするのはかまわないの。
今、辛いのはきっとあたしよりも藤田さん。
あなたが傷つく顔は見たくない。
「わかっているから」
わかっているからこそ、
「藤田さんのそばにいたいの」
あなたにそんな表情をさせるすべてに近づきたいの。
まだ全然わからない、あなたのすべてに近づきたいの。
今までも時折あったあなたの表情を曇らせる理由のすべてを知りたいから、
「そばにいさせて」
朝の太陽が差し込んで、部屋は少しずつ明るくなり始めた。
あたしは、
藤田さんにとって、
心休まる存在になりたいの。
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