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-龍神伝説-
1章 始まりの瞬間【とき】

 放課後。
 悠貴は昴との約束通り、教室で昴の部活が終わるのを待っていた。教室には、自分以外は誰もいない。
 椅子に一人座っていると、いろいろな思いが頭の中を巡る。幼い日の思い出、自分を生んですぐに死んでしまったという母のこと。昴のこと。自分と家族のように接してくれた昴の家族の人たちのこと。そして、父のこと。
 父のいない生活も、半年経つと案外慣れてしまうものだと悠貴は思う。それは父に対して薄情な気がして、気が咎めない訳ではなかったが、父のいない生活が日常になってしまったというのは事実だった。もちろん、父を心配しているし、不安も消えてはいないけれど…それでも昴がいれば心のどこかで安心できる。

 「悠貴。待たせた。行こう」
悠貴が待っている教室へ昴は走ってやってきた。ほんの少し部活が長引いてしまったらしく、軽く息を切らせている。約束の時間を少し過ぎていた。独りになったときの癖でいろいろ考えていたから、時間の流れに気がつかなかった。
「平気。行こ?本当にかわいいお店なんだから」
悠貴は昴と一緒に学校を後にした。

 その店は、通りから少し奥に入った所にあった。洋風の建物に、蔦が絡まって、いかにも古めかしい。通りから少し奥に入っただけで、人の姿が見あたらない。こんな所で商売になるのか、というような所だ。
 昴はこの店を見て、悠貴の好きな感じの店だと思った。横を見れば、やっぱり、悠貴は楽しそうな顔をしている。
 二人は店の中へ足を踏み入れた。

 そこはまるで、別の世界のような空間だった。世界中のありとあらゆるアンティークな代物がところせましと並べられている。不思議な事に、店の主人らしき人物の気配がしない。
「店、休みなんじゃねぇの?誰もいないじゃん」
昴は店内を見まわして言った。
「そんなことないと思うよ。だって中には入れたんだし」
悠貴の返事はいたって気楽なものだった。
「そういうもんかねー」
昴は得体の知れない掛け軸やら、いわくありげな壷やらを見て言った。店内のものを見ていると、どうも悠貴はこの店の商品ではなく、この店自体が気に入っているようだ。
 昴はこの店の雰囲気になじめなかった。薄暗い店内は、自分たち以外に人間がいないのも手伝って、どことなく不気味な感じがした。決して悪くはない調度の数々も経てきた歳月の分、重々しさが感じられ、何か力が――魔法のようなものが――宿っていてもおかしくないような気配を漂わせていた。その上に並べられた、洋の東西を問わない品々もまた妖しい光を放っているように見える。
 「かわいい、ねぇ…」
見る限り、少なくともそのようには思えない。幼馴染の感覚を若干疑いながら、らくだの陶器に息を吹きかけた。うっすらと積った埃がゆっくりと舞う。
 平気なのだろうか――悠貴は。
「…れ?悠貴?」
さっきまで傍にいたと思っていた悠貴の姿が見えなくなった。狭い店の中にごちゃごちゃと骨董品が置かれていて、歩くのにも細心の注意が要る。
「ったく、どこ行ったんだ」
あきれながらも昴は店内をうろうろと探しだした。

 悠貴は誰かに呼ばれたような気がした。直接声を聞いたわけではないけれど。心の奥――自分でも知らない深い部分が呼ばれた――というより惹かれたのだ。目の前のモノに。
 それは木箱だった。とても古い古い――でも朽ちてはいないのだ。不思議な事に――その箱には錠がかけられていた。
「悠貴、そこにいたのか。ん、なんだそのボロッちい箱は」
昴は悠貴とその前にある小さな木箱を見つけた。 悠貴は昴には応えずにその木箱へと手を伸ばす。心に直接響く声に惹かれつづけたまま。
「おい、やめろって。勝手に触るんじゃねぇって」
昴は小さな子供に言い聞かせるように言った。錠は錆びていてとても開けられそうもなかった。近くに鍵も見当たらない。
 と。
 昴が悠貴の手をつかんでそれに触るのをやめさせようとした、まさにその時、錠がひとりでに開いた。まるで下手な小説の話のように。
「な、なんだ。元から開いてたのか?」
「違うな。そんなはずはない」
 背後から声が聞こえたのは、丁度その時だった。

 ――違うな。そんなはずはない――
 二人が振り返ると、一人の老婆の姿があった。
「いらっしゃいませ。私がここの主でございます」
老婆はゆっくりと言った。
「お婆さん…この箱…」
悠貴が開いたままの木箱を手にとって言った。
「おお。この木箱を開けたのは、お嬢さんかな」
老婆は悠貴のことをまじまじと見つめた。
「何なんだよ、一体…」
昴は悠貴をなめるように見つめる老婆から、悠貴をかばうように二人の間に割って入った。
「お嬢さん、名前は?」
老婆は昴を無視して話を進める。
「和泉…悠…貴…」
「おい、おい、悠貴」
戸惑いながらも素直に答えてしまうところが悠貴らしい、そう思いながらも、自分だけ話から取り残されていることに気づいた昴は、何とか話に割り込もうとした。
「一体、どういうことなんだよ? 婆さん、何の話をしてる?」
「…選ばれたんじゃよ」
「へ?」
悠貴と昴は同時にそんな声を上げた。
「これは選ばれた者にしか開けることはできん。これを開けられたということは、悠貴、お前は選ばれた人間なんじゃ」
老婆は悠貴の手から木箱を、これまた古めかしい机の上に移した。
「蓋を…開けてごらん」
「いいんですか?」
「やめとけって。この箱、なんか妖しいし…」
昴は悠貴の耳元で老婆に聞こえないように囁いた。
「開けてごらん。お前は、この箱の中に在るものに選ばれたのだから…」
昴の言葉に気づいた様子のない老婆の言葉に促されて、悠貴は老婆の言葉のままに木箱の蓋を開けた。

 「何だ?これ」
最初に口を開いたのは昴だった。
 さっきから変なことばかり起こるから、今度は何だ、と緊張していたのに、何事もなかったので拍子抜けしてしまった。
「石…かな」
悠貴はそれに触れようと指をのばす。
「勝手に触っていいのかよ?」
昴は心配そうに老婆の方を見た。
「大丈夫じゃよ。それから、これは龍宝玉という…」
「龍宝玉?」
悠貴はそれを手に取った。
 一瞬、それが光ったように――悠貴には見えた。

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